この記事では、大鳥雄介先生の漫画『MAD』を読んだ感想を紹介します。
前半では、未読の人でも読めるようにネタバレなしであらすじや面白かった点をまとめています。後半では、印象に残ったシーンや考察をネタバレありで書いています。
購入前に雰囲気を知りたい人は、まず前半だけ読んでみてください。
エイリアンに侵略された地球で、人は何を支えに生きていくのか。『MAD』は終末世界の不気味さだけでなく、生き残った人間の心の動きにも惹き込まれる作品でした。絶望の中で希望を持とうとする姿や、淡々と進む中で急に物語が動く緩急が印象に残ります。
あらすじ
『MAD』は、大鳥雄介先生によるダークファンタジー作品です。
舞台は、謎のエイリアンによって人類の多くが滅んだ世界。主人公のジョンは、妹やわずかに生き残った人々とともに、新天地を求めて移動する日々を送っています。
しかし、その道中で突如エイリアンの攻撃を受けます。
絶望的な世界の中で、人は何を信じて生きるのか。『MAD』は、終末世界の恐怖と人間の生き方を描いた作品です。
面白かった点
絶望の中で希望を持とうとする姿が良い
『MAD』で特に良かったのは、エイリアンに侵略された世界で生き残った人たちが、どうにか希望を持とうとするところです。
世界はかなり絶望的です。普通なら心が折れてもおかしくありません。
それでも、登場人物たちは完全にあきらめるのではなく、少しでも前へ進むための理由を探しています。
この「希望の持ち方」が大げさではないところに惹かれました。強い信念で世界を救うというより、今日を生きるために気持ちを保つ。そういう泥臭さが作品の魅力になっています。
じわじわと不気味さが増していく
物語が進むほど、何が起こるかわからない不気味さが強くなっていきます。
エイリアンが存在する世界というだけでも怖いですが、『MAD』の怖さはそれだけではありません。
静かな場面でも安心できず、どこか不穏な空気があります。
急に大きな事件が起きるというより、じわじわ不安が積み上がっていく感覚です。読んでいる側も、次のページで何が起こるのか気になってしまいます。
主人公ジョンに好感が持てる
ダークファンタジーの主人公は、性格が尖っていたり、最初から覚悟が決まりすぎていたりすることもあります。
でも『MAD』の主人公ジョンは、かなり人間味のある人物です。
妹思いで、考え方も特別にかっこつけているわけではありません。むしろ、いい意味で泥臭いです。
だからこそ、過酷な世界で必死に生きようとする姿に感情移入しやすくなっています。
強くて完璧な主人公ではなく、普通の感覚を持った人間があがく。そこがジョンの魅力だと感じました。
淡々とした展開と急展開の緩急が大きい
『MAD』は、ずっと派手な展開が続く作品ではありません。
淡々と進む場面もあります。
ただ、その静けさがあるからこそ、急に物語が動いたときの衝撃が大きくなります。
落ち着いた空気の中に不穏さがあり、気を抜いたところで一気に状況が変わる。この緩急がかなり効いていました。
ストーリーとしても、これからジョンがエイリアンや生き残った人々とどう対峙していくのか気になります。
こんな人におすすめ
『MAD』は、終末世界やダークファンタジーが好きな人におすすめです。
特に、ただ敵と戦うだけではなく、生き残った人間の心理も楽しみたい人には合うと思います。
エイリアンに侵略された世界の不気味さ、先の読めないストーリー、泥臭く生きようとする主人公。このあたりに魅力を感じる人なら、かなり刺さる作品ではないでしょうか。
一方で、明るい冒険ものを読みたい気分のときには少し重く感じるかもしれません。
暗い世界観の中にある希望を味わいたい人向けの作品です。
ここからネタバレあり
※ここから先はネタバレを含みます。
印象に残ったシーン
一番印象に残ったのは、主人公が死んでしまった妹と、本当に会話しているかのように振る舞う描写です。
この場面はかなり心に残りました。
ただ「妹を失って悲しい」と説明するのではなく、想像の中の妹と会話しているように見せることで、ジョンの心の状態が伝わってきます。
現実を受け止めきれないまま、それでも生きようとしている。
その苦しさが作画から伝わってくる描写でした。
読者に説明しすぎず、でも違和感や痛みはしっかり届く。ここは『MAD』の見せ方の上手さが出ている場面だと思います。
考察・感想
ジョンが想像の中の妹と会話する描写は、彼にとって妹の存在がどれだけ大きかったのかを表しているように感じました。
妹は、ジョンが生きる理由に近い存在だったのだと思います。
エイリアンに侵略された世界で、人類の多くが滅んでしまった。そんな状況で、すぐに現実を受け入れて前を向ける人の方が少ないはずです。
ジョンも決して強い人間ではありません。
だからこそ、心の中に妹を残しながら生きようとする姿に説得力がありました。
この描写があることで、ジョンはただの主人公ではなく、傷つきながらも何とか立っている人間として見えてきます。
弱さがある。未練もある。現実から目をそらしたくなる瞬間もある。
それでも進もうとするからこそ、ジョンの泥臭さに好感を持てました。
読み終えた後の感想
読み終えたあとに強く残ったのは、これからジョンがどう変わっていくのかという期待です。
エイリアンとどう対峙するのか。
生き残った人間たちとどう関わっていくのか。
そして、妹を失った現実とどう向き合っていくのか。
まだまだ気になる部分が多く、先の展開を追いたくなる作品でした。
『MAD』は世界観の不気味さだけでなく、主人公の心の揺れも見どころです。淡々とした展開の中に、急に状況が変わる怖さがあります。
この緩急があるからこそ、読後も作品の空気がしばらく残りました。
総評
『MAD』は、エイリアンに侵略された終末世界を舞台にしながら、人間の弱さと希望を丁寧に描いた作品です。ジョンの泥臭い生き方に好感が持てました。不気味さと急展開の緩急も魅力で、続きが気になるダークファンタジーです。

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